マタイ福音書の18章は教会共同体のありかたについての教えを集めた個所だと考えられています。今日の福音は、教会共同体としてどれだけ兄弟をゆるしたらいいのかということがテーマになっています。ゆるしは、イエスの教えの中で一番イエス的な考えです。祈りや信仰なら、他の宗教も求めていますが、ゆるすことはイエスの独特な教えです。またイエスのすべての教えの中で一番守りにくい、一番難しい掟です。この掟を守るためにはどうしても神の恵みと力が必要とされています。

わたしたちは、人の弱さや欠点・不注意からおこる日常の些細なことは、あるていどがまんしたり赦すことができます。でも、もし、爆弾テロや無差別殺人などで身近な人が被害を受けるなら、なかなか許すことができないかもしれません。

竹下節子の「カトリック・サプリ人生を活性化する25錠」という本に、中央アフリカのブルンジで「一万人の子の母」と呼ばれているマギー・バランキストという女性のことが書かれています。この女性はその半生を残虐な部族間戦争の時代に過ごし、身近な人間の殺し合いを経験して生き延びた人々は、どこかの時点で「過去の憎悪を水に流す」作業をしなければ、新しく生き始められない。許すことは唯一の生存戦略だ。と言っています。そして、「それでも人を赦す五つの理由」を上げています。

その一、それは、わたし自身、完全でないからです。私はしばしば兄弟たちを傷つけます。だから彼らに赦してもらう必要がある。赦しがなくなれば世界は地獄です。

その二、私はある行為を非難できるけど、ある存在を非難できないからです。罪を犯した人間は、単なる罪人ではなく、キリストが救おうとした「神の子」なのです。

その三、ゆるすという行為は私を解放するからです。恨みの感情は私の中で生命が湧き起るのを妨げます。ゆるすことは私を生に連れ戻してくれます。

その四、ゆるすことで、私は生命を与えることができるからです。私を攻撃した者を放免することで、私はその人を本来のその人として、もう一度誕生させることが・・・

その五、ゆるすことで幸せになれるからです。私の養女は、実の両親の殺害者たちをゆるしました。この辛い過去にかかわらず、彼女は今や自由で、輝くばかりの娘・・・

先週、金曜日の朝、北海道の上空を北朝鮮のミサイルが通過し、緊急速報が発せられました。いつまでこういうことが続くのかと考えると憂鬱になります。「目には目を、歯には歯を」の考えを捨てなければ、平和はやってきません。片方だけが悪いわけではなく、自分たちの核やミサイルも減らすから、お互いに話し合おうとする姿勢が大事だと思います。一万タラントンの借金をしている者が、百デナリオンの借金をしている者をゆるさない話が今日の福音にあります。世の中の指導者たちが、もっと福音的に、大きく物事を見て、賢くなるようにわたしたちは祈らなければなりません。そして、わたしたちも、神と人々から、たくさんゆるしてもらっていることをわすれないで、謙遜になり、人の過ちをゆるすように努めましょう。

これはおまけのジョークです。

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  敵

牧師は敵を赦すということについて説教をしてから、「それでは、敵を赦す気持ちになられた人は手を挙げてください」と挙手を求めた。すると、全員が挙手した。ただ一人を除いて。

牧師はその人に尋ねた。「ジョーンズさん、あなたは敵を赦す気持ちにはなれないのですか?」

「わしには敵なんていません。」

牧師は「ジョーンズさん、それはたいへん貴重なお話です。あなたは86歳であることはよく存じています。それでは、前に来ていただいて、どのようにしてこの世の中で一人の敵も作らずに今まで長生きしてこられたのか、私たちみんなのために、ひとつお話していただけませんか」と頼んだ。

ジョーンズ氏はヨボヨボした足取りで前に出てくると、無愛想に答えた。

「どうっていうことはありませんよ。敵がみんなわしより先に死んでしまったというだけのことです。」

(必笑ジョーク202 中野雄一郎 & 岸義紘 編集 いのちのことば社)より

もう一つおまけの川柳です。・・・(虫たちは元気でいても虫の息)