美しい人に
― 旅は道連れ ―
昔、あるところに、あだ名が「泥カブラ」という少女がいました。石を投げられたり、つばをはきかけられたり、そして少女の心は、すさんでいきいきました。その日も、くやしさで荒れ狂っていたときに、通りがかりに出会った旅のお爺さんに「美しくなりたい!」と涙ながらに訴えますと、お爺さんは、こう言いました。
自分を恥じないこと。どんな時にも、にっこり笑うこと。人の身になって思うこと。
この三つのことさえ守れば、村一番の美しい人になれるというのです。少女の心は激しく揺れ動きましたが、美しくなりたいという心が勝ちました。
それから少女の痛々しい努力が始まります。何度も屈辱に負けそうになりましたが、耐えました。とうとう劣等感から、自らはいあがったのです。少女の心はおだやかになり、憎しみが消え、近づきやすい女の子に変わっていきました。村人たちの使い走りや、赤ちゃんのお守りが日課になりました。
ある日、村の少女が「人買い」に連れられていかれるところを目撃して、彼女は喜んで身代わりになり、人買いに連れられて村を出ていくのでした。人買いは凶悪な心をもつ男でした。しかし、彼女は道々明るく語りました。何よりも愛している村の子供のことなどを打ち明けながら、自分が売られていく道を、人買いと共に歩いていきました。
人買いの心は、次第に苦しくなり、とうとう彼女の心に負けました。彼の胸のうちが暖かくなってきたのです。生きる喜びを吹き込まれたのです。
彼は書き置きを残して、人生をやり直そうと立ち去っていきました。「ありがとう、仏のように美しい子よ」。手紙を読んで少女は、お爺さんのことばが本当だったことを理解したのです。「泥カブラ」の顔が、月の光のなかで、美しく輝いていたのでした。
(真山美保 作・演出「泥かぶら」から短縮編集して借用)
内省のために:
☆ 人に対して、優しくしたことがありますか。
◎ 自分自身の価値に気がついていますか。自分にも賜物があると信じますか。
★ 人をいじめたり差別したり、憎んだことがありますか。
☆ 「同じようにしなさいは」は、隣人になること。「なる(Be)」です。
聖書の個所:
ル カ 10:25―37 「あるサマリア人の例え」
1ヨハネ 4:16~21 「愛するのは、神がまず愛してくださったから….」
ロ-マ 12:9~21 「『復讐は私のすること….』と主は言われる」